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【台本】ユメコと大悪魔

ユメコ:恋する乙女(女子高校生) 台詞数:20

大魔王:わりとえらい魔王(男) 台詞数:19

  ユメコ、魔方陣を描く。

 

ユメコ「よし、できた。魔方陣はこんな感じでいいよね。紋章が書かれた紙に、おじいちゃんからもらったお守りに、良い匂いのお香。(深呼吸する)。エロイムエッサイム・エロイムエッサイム! 私の声に答えて!」
大悪魔「私を呼んだのはお前か?」
ユメコ「ほ、ホントに出てきた……」
大悪魔「さあ、お前の願いは――」
ユメコ「ちょっと待って!!! はぁ、緊張する~」
大悪魔「早く言うのだ」
ユメコ「ま、まだ心の準備ができてないです!」
大悪魔「……では、できたら呼びたまえ。私は帰る」
ユメコ「待って、帰らないで!!!」
大悪魔「では、早く願いを言うことだ」
ユメコ「う~急かさないでよぉ。こういうの初めてなんだから」
大悪魔「……して、何故お前はこちらを見ないのだ」
ユメコ「そ! それは……その……」
大悪魔「私は目が合ったからと言って、すぐさま呪いに掛けるような愚かな悪魔ではない」
ユメコ「そ、そうよね。こういうのは目を見て言わないと。……ああ、ダメ! 見れない~~~!」
大悪魔「……そんなに醜い容姿はしておらんのだが、少し傷つくぞ」
ユメコ「すみません。で、では、見ます……!」

 

  ユメコ、大悪魔を見て、あまりの美しさに声が出せなくなる。

 

大悪魔「……どうした。石にした覚えはないが」
ユメコ「はぁぁぁ~~~! キレイすぎる~~~! 夢みたい~~~!」
大悪魔「(嬉しそうに)そうであろう、そうであろう。私は大悪魔であるからな。容姿も優れておる。では、そろそろ願いを言いたまえ。お前が用意した道具ではもう1分もおれん」
ユメコ「え!?!? もう帰るんですか!?」
大悪魔「当たり前だ。女子(おなご)ゆえに出てきてやったが、100年も食事をしておらんのでな。具現化できるほど魔力は残っておらん」
ユメコ「じゃ、じゃあ! 言います! 大悪魔さま、私を大悪魔さまのお嫁さんにしてください!!」
大悪魔「ほう。私の妻になると。自身を捧げるとは余程叶えたい願いなのだろう。誰を呪うつもりなのだ」
ユメコ「違います! 私の願いは大悪魔様のお嫁さんになることです!!」
大悪魔「……お前に得があるように思えんが」
ユメコ「私、小さい頃この魔術書を読んでからずっと大悪魔様に会いたいなって思ってたんです。だって、こんなに美しいんですよ? 実物も本で見るより何倍も良いし」
大悪魔「……そこに描かれているのは絵だがな。小さい頃から変わった女子だったのだな」
ユメコ「はい。なので、友だちも全然できなくって、いつも教室で一人でいました。寂しかったですけど、大悪魔さまがいたから今日まで生きてこれました」
大悪魔「……人間よ、その願いは叶わぬ」
ユメコ「どうしてですか!?」
大悪魔「……人間は人間と結ばれるものだ」
ユメコ「種族の違いなんて気にしません! 頑張って長生きしますから!」
大悪魔「……それに」
ユメコ「それに?」
大悪魔「お前は私の好みではない。まず、もっと女らしい体つきになれ」
ユメコ「せ、成長期なんです! すぐグラビアアイドル並みの体つきになりますから! だから……!」
大悪魔「……時間だ。さらばだ。また会おう」

 

  大悪魔、消える。

 

ユメコ「……『また会おう』? ってことは……また会ってくれるってこと!? 今度会うまでに女らしい体つきになるぞ~!」

​END

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